妻から夫への財産分与額を減額する代わりに、子どもの大学学費等を全て妻が負担する内容で離婚した事例
依頼者 夫
夫 49歳 会社員 大阪府大阪市在住
妻 47歳 会社員 兵庫県西宮市在住
離婚原因 長期の別居
きっかけ 妻から離婚を求められた
財産 不動産・預貯金・生命保険・株式・退職金・子どもの預貯金、学資保険
子ども 3人
Aさんは、妻Bから離婚を求められたことをきっかけに、約5年前から妻Bと別居していました。
その後、妻Bから改めて離婚条件の協議を求められたため、Aさんは今後の対応を当方に依頼されました。
Aさんとしても離婚すること自体に異論はありませんでしたので、弁護士は、妻Bに財産資料等を開示させ、離婚協議を行いました。
この時点で妻Bも弁護士に依頼していましたが、妻Bは、別居後にAさんが支払った妻B宅の住宅ローン総額約500万円について、「毎月婚姻費用から住宅ローン相当額を差し引いた額がAさんから妻Bに送金されていたので、実質的には妻Bが住宅ローンを支払ったことにして財産分与額を算定すべき」と主張してきました。
しかし、Aさんと妻Bとの間で婚姻費用の取り決めはしていなかったものの、Aさんが別居後に負担した婚姻費用の金額は相当額を超えており、かつ、それとは別に妻B宅の住宅ローンもAさんが負担していたため、妻Bの主張は事実と異なりました。
また、妻Bは不動産を取得する(その代わりに住宅ローンの残額を妻Bが引き受ける)ことを希望していましたので、それを前提とすると、妻BがAさんに支払うべき財産分与額は900万円程度と考えられました。
そのことを何度も弁護士は妻Bに説明しましたが、妻Bはこれを受け入れず、それ以外にも理不尽な主張を繰り返したため、離婚協議は決裂し、その後の離婚調停も不成立で終了しました。
その後、妻Bは離婚訴訟を提起してきました。
訴訟手続きにおいても、妻Bが従前の主張を繰り返したため、弁護士は、別居後のAさんの口座(婚姻費用を毎月送金していた口座)の取引履歴を全て開示し、Aさんが別居後に負担していた妻Bの婚姻費用は相当額を超えていることを立証しました。
それでも、妻Bは主張を変えず、「妻Bには200万円しか支払う資力がない」などと主張してきました。
ただ、裁判官も交えた和解協議をした結果、裁判官から「妻BがAさんに支払う解決金を200万円とする代わりに、本来養育費(算定表どおりに算定した一人当たり月7万4000円)とは別にAさんが負担すべき子ども達の教育費(私立高校及び大学の学費等の一部)について、離婚成立後の分も含めて妻BがAさんに一切請求しない。」という和解案が示されました。
判決になった場合、Aさんが毎月の養育費とは別に負担しなければならなくなる子ども達の教育費は、過去分(別居後に妻Bが支払って、Aさんが全く負担していない分)と将来分を合わせると合計700万円程度になる可能性がありました。
そうすると、Aさんが上記教育費約700万円の負担を免れ(同教育費を全て妻Bが負担し)、かつ、200万円を妻Bから受領できるのであれば、Aさんが妻Bから900万円程度の財産分与を受けたのと実質的に同じ結果となるため、Aさんは裁判官の和解案を受け入れました。
その後、妻Bも裁判官の和解案を受け入れたため、最終的に、「①妻Bが不動産を取得する(住宅ローンの残額も妻Bが引き受ける)代わりに、妻BからAさんに200万円を支払い、②子ども達の養育費は一人当たり月7万4000円とし、③同養育費以外の教育費を将来分も含めて妻BがAさんに一切請求しない。」という内容で離婚を成立させました。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
【アクセスマップ】