相談事例19(吹田市在住の方からのご相談)借地権(土地賃借権)付きの自宅を夫から財産分与してもらい、離婚後も自宅に居住し続けることはできるか?
民法上、賃借している土地や建物について、賃貸人に無断で賃借権の譲渡・賃借物の転貸をした場合は、
賃貸人は賃貸借契約を解除することができるとされています(民法612条)。
ただし、裁判実務上、賃貸人の許可なく賃借権の譲渡・賃借物の転貸をした場合であっても、
当該賃借権の譲渡・賃借物の転貸が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、
賃貸人は賃貸借契約を解除することはできないと考えられています。
本件の場合、離婚に伴う財産分与として、夫から妻に自宅建物と一緒に借地権を譲渡するということですので、
「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」があると判断される可能性は十分にあります。
「背信的行為」が認められなければ、賃貸人は賃借権の無断譲渡を理由に賃貸借契約を解除することができませんので、妻は離婚後も自宅に居住し続けることができます。
ただ、その他の事情によっては、「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」が認められず、その結果、賃貸人から賃貸借契約を解除される可能性がないわけではありませんので、事前に夫から妻に土地賃借権の譲渡(借地権付きの自宅の譲渡)をすることについて、賃貸人の同意を得ておいた方がいいでしょう。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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