依頼者は有責配偶者であったが、離婚に消極的な夫を説得して協議離婚を成立させた事例
依頼者 妻
夫 49歳 会社員 茨木市在住
妻 47歳 会社員 茨木市在住
離婚原因 不貞行為
きっかけ 夫から慰謝料を請求された
財産 不動産・預貯金・生命保険・株式
子ども 2人
Aさんは、Cと不貞行為を行ってしまいました。
そのことが夫Bに発覚したため、夫Bは弁護士に依頼し、Aさんに対し、慰謝料500万円を請求してきました。
夫BはAさんに離婚を求めてはいませんでしたが、Aさんとしては、「不貞行為発覚前から夫Bとの夫婦関係はかなり悪化しており、既に子どもも成人していたため、夫Bと離婚したい。」という意向であり、夫Bに慰謝料を支払うのと同時に離婚も成立させることを希望していました。
そのため、Aさんは夫Bからの慰謝料請求に対する対応だけでなく、夫Bとの離婚協議も当方に依頼されました。
弁護士が夫Bに対して離婚協議と夫B名義の財産資料の開示を求めたところ、夫Bは離婚に消極的な姿勢を示し、財産資料の開示も拒否してきました。
ただ、Aさんは不貞行為を行った有責配偶者であったため、夫Bの同意がない限り、少なくとも別居期間が7~8年以上ないと離婚訴訟を提起しても離婚が認められない可能性が高いと考えられました。
そのため、弁護士はAさんと相談した上で、離婚に同意するよう夫Bを説得することを最優先にするために、夫Bから財産資料を開示させることを断念し、Aさんが把握できている夫B名義の財産を前提に離婚条件を検討することにしました。
夫B名義の財産の中には個人年金保険があり、すぐに解約した場合の解約返戻金の額は500万円を超えないと考えられましたが、あと十数年解約せずに保険料を支払い続ければ満期となり、総額1200万円の満期保険金が受取人に支払われると考えられました。
そこで、弁護士は、夫Bに対し、「財産分与として上記個人年金をAさん名義に変更し、離婚後の保険料はAさんが支払っていく。」という離婚条件を提案し、慰謝料についても減額交渉を行いました。
これに対し、夫Bは、個人年金保険の名義変更については拒否してきました。
もっとも、その後も弁護士が交渉を続けた結果、夫Bは、「個人年金は渡せないが、不動産を夫Bが取得する(住宅ローンも夫Bが離婚後支払っていく)ことを前提として、財産分与金として約520万円をAさんに支払う内容であれば、離婚に応じる。その場合のAさんが支払う慰謝料も300万円に減額する。」と回答してきました。
Aさんと夫Bの共有名義になっている不動産はオーバーローンで資産価値がマイナスの状態でしたので、Aさん名義の共有財産とAさんが把握している夫B名義の共有財産を前提とすると、裁判で争っても財産分与額が500万円前後になる可能性がありました。
そのため、夫Bが提示してきた約520万円という財産分与額は、相当額よりも低いとは断定できない状況でした。
ただ、離婚慰謝料の相場は200万円~300万円ですので、慰謝料300万円という金額は、相場の範囲内とはいえ少し高いと考えられました。
もっとも、Aさんは有責配偶者であり、夫Bの同意がなければ早期の離婚成立が困難であるため、離婚慰謝料の金額に早期離婚のための解決金の金額が上乗せされていると考えれば、慰謝料として高すぎるとまではいえませんでした。
そのため、Aさんも夫Bの提案してきた上記離婚条件に納得され、最終的に「Aさんが夫Bに負担する慰謝料を300万円とし、これを夫BがAさんに負担する財産分与金約520万円と相殺し、夫BがAさんに対し約220万円(財産分与金と慰謝料の差額)を支払う」という内容で協議離婚を成立させました。
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寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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