【弁護士が解説】夫婦それぞれの視点で見る熟年離婚のよくある原因とは
目次
長年連れ添ったパートナーとの関係に、今悩んでいませんか?
近年、熟年離婚する夫婦が増えています。
本記事は、熟年離婚の原因等について解説していますので、参考にしてください。
妻が離婚を考える原因としては様々なものがありますが、熟年離婚特有のものとしては、①定年後の同居によるストレス、②子どもの自立、③介護問題等があります。
熟年離婚を考える夫婦の中には、結婚当初から「男性が外で働き、女性は家庭を守る。」という考え方を持ち、かつ、実際にそのような役割分担で夫婦生活を送ってきた方も多くいらっしゃいます。
そのような場合、妻は、夫が平日の日中に自宅にずっといる生活というものに耐性がなく、強いストレスを感じてしまうことがあります。
そうすると、夫への接し方が厳しくなったり、夫婦喧嘩が増えたりして、夫婦関係が悪化し、熟年離婚を考える原因になりやすいです。
特に、定年前から夫婦関係が険悪になっていた場合は、定年に備えて離婚を検討されたり、定年後少し生活してみて、これから何十年か同居していくことは不可能と判断される方も多いです。
妻が熟年離婚を考える年齢になっている場合、既に子どもが社会人となって自立しているケースは多いです。
夫婦関係が悪くても、子どもが自立していない場合は「子どものため」と考えて離婚を思いとどまる方も多いです。
そのような場合、子どもが自立することで、離婚を思いとどまる理由も消滅するので、子どもの自立と同時又は自立の目処が立った時点で、本格的に離婚を検討するケースが多いです。
平均寿命が伸びたことにより、夫婦間で介護が必要なケースも増えています。
女性の方が男性よりも平均寿命が長いので、夫が高齢の場合、将来の夫の介護について心配する女性も多いです。
また、双方の両親の介護が必要になってくるケースもあります。
現在では介護保険制度が充実しており、国や市区町村による介護サポートを受けられるケースも多いと思います。
ただ、育児の大半を妻が担ってきたような夫婦の場合、育児がひと段落ついた段階で、夫の両親や夫の介護を検討しなければならなくなるのは、妻に多大な負担が生じるため、介護問題も熟年離婚の原因になりやすいです。
妻と同様に、夫が離婚を考える原因も様々なものがありますが、熟年離婚特有のものとしては、①定年退職による生活環境の変化、②家族の接し方の変化、③老後の不安が解消されていること等が考えられます。
定年退職をすると、妻と過ごす時間が増え、退職前は気にならなかった妻の趣味や生活態度について、嫌なところが目につくことがあります。
そのような場合でも、趣味などで適宜ストレスを解消できれば問題ないのですが、ストレスが蓄積してしまうと、妻に対してきつくあたったり、夫婦喧嘩が増え、熟年離婚の原因となることがあります。
熟年離婚を考える年齢になっていると、職場で役職に付いている夫が多く、若いころと比べて高額な給料をもらっていることも多いため、夫の給料で裕福な生活ができているケースは多いです。
他方で、家族を養うため、家族と過ごす時間よりも仕事を優先してきた夫も多いので、若いころと比べて、妻や子どもから冷たい態度をとられるケースも少なくありません。
そのような状況が続くと、夫は「自分は一生懸命働いて家族の裕福な生活を支えているのに、家族からはないがしろにされている」などと強い疎外感を抱くことが多いため、熟年離婚の原因になりやすいです。
熟年離婚を考える年齢になっている場合、夫は、長期間働いて多額の貯蓄をしているケースが多いので、婚姻中に貯蓄した財産や退職金等を使用して、妻の支えがなくても豊かな老後を過ごせる見込みが立っているケースも多いです。
そのため、熟年離婚を考える夫は、老後の不安が解消されていることが多いです。
老後の不安がないからといって直ちに離婚に繋がるわけではありませんが、離婚に対する抵抗が弱くなることも否定できないため、若いころであれば離婚に至らなかった些細な夫婦喧嘩であっても、熟年離婚につながってしまうこともあります。
熟年離婚にはメリットもあれば、デメリットもあります。
熟年離婚のメリットとしては、
①関係の悪化した配偶者の言動に我慢する必要がなくなる
②折り合いの悪い配偶者の親族とも関わる必要がなくなる
③新たな恋愛や趣味を含め、残りの人生を自分のためだけに自由に謳歌できる
等が挙げられます。
反対に、熟年離婚のデメリットとしては、
①配偶者の協力が得られなくなって経済的に困窮することがある
②定年退職後は、家族だけでなく気軽に相談できる同僚もいなくなり、孤独感が増す
③配偶者に任せていた家事等を自分一人で全て行わなければならなくなる
等が挙げられます。
一時の感情にまかせて熟年離婚を強行してしまうと、離婚後に想定していなかった厳しい事態に直面してしまうこともあります。
熟年離婚を後悔しないようにするためには、まずは自分の気持ちを整理し、場合によっては夫婦で話し合う等して、今後夫婦関係を継続していくことが本当に不可能なのかを検討しておいた方がいいでしょう。
その上で、離婚が避けられそうにない場合は、離婚後の生活環境も慎重に検討しておく必要があります。
具体的には、離婚後に生活する場所、離婚後に得られる収入の見込、離婚時に取得できる財産分与・慰謝料・年金等の見込、離婚後に必要になる生活費の見込等を検討し、離婚後に十分生活していけるかどうかを具体的にイメージすることが大切です。
また、確実に財産分与を確保するため、必要な証拠書類を収集しておく必要があります。
熟年離婚の場合は、離婚時の財産分与が複雑になったり、高額になることが多いので、婚姻後に築いた財産の種類が多い場合や評価額が高額になる場合は、正確な財産分与の見込額を知るため、また、別居前に収集しておく証拠を知るため、弁護士への相談をお勧めします。
新たな一歩を踏み出すために、まずは専門家にご相談ください。
当事務所は熟年離婚も多数扱っていますので、熟年離婚をお考えの場合は、一度当事務所までご相談ください。
寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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