相談事例29(豊中市在住の方からのご相談)現在夫と離婚調停中だが、調停係属中に夫は特に理由もなく突然勤めていた会社を退職した。その後夫は「現在無職なので、養育費を支払う義務はない」と主張しているが、夫に養育費の支払を求めることはできるか?
離婚調停が進む中で、夫が会社を自己都合で退職。「無収入なので養育費は払えない」と主張し始めました。
健康状態や学歴、過去の経歴から見て、夫には十分に稼働能力があると考えられましたが、本人は拒否の姿勢を崩しませんでした。
親の恣意的な退職によって、子どもが受け取るべき養育費がゼロになる不当性を解消する必要がありました。
相手の主張
弁護士の対応:
退職に健康上の理由など正当な理由がないことを指摘。実務上の「潜在的稼働能力」を基準に計算すべきと反論しました。
夫の学歴や年齢、前職の給与、および平均統計(賃金センサス)に基づき、「本来得られるべき収入」を算定基礎とすることを裁判所に求めました。
裁判所も「特段の理由なき退職」として潜在的稼働能力を肯定。前職の収入水準を前提とした養育費案を提示しました。
現に無収入であっても、働く能力や意思があれば「働こうと思えば稼げるはずの収入」があるとみなされる考え方です。
退職の経緯、健康状態、学歴、資格などを総合的に考慮して判断されます。理由なき退職は「稼働能力あり」とされ、養育費を請求できる可能性が高いです。
離婚調停で養育費について取り決める場合、調停成立時の夫婦の年収に応じて養育費の金額が決められるのが原則です。
ただし、調停成立時に夫婦の一方が無収入であったとしても、当然に無収入であることを前提に養育費の金額が算定されるわけではありません。
すなわち、現に無収入の者であっても、働こうと思えば働ける状態にあるのであれば、その者には潜在的稼働能力が認められることになりますので、
その潜在的稼働能力に応じた収入を前提として養育費が算定されることになります。
養育費の支払義務者が調停成立前に退職して無収入になった場合は、
退職の経緯、過去の経験や就業状況、健康状態、学歴、資格の有無、年齢等を考慮して潜在的稼働能力の有無・程度が判断されます。
本件の場合、夫が調停係属中に会社を退職して無収入になっていますが、特に退職する理由はなかったということですので、夫に潜在的稼働能力が認められる可能性が高いと考えられます。
そのため、夫の潜在的稼働能力に応じた収入(夫の退職前の収入や賃金センサスを用いて算定した収入等)が養育費の算定基礎とされる可能性が高いので、夫に養育費の支払を求めることができるでしょう。

寺尾 浩(てらお ひろし)
平成4年3月 一橋大学法学部卒業
平成9年 司法試験合格(52期)
離婚交渉は当事者にとって精神的につらい作業です。
また離婚は、過去を断ち切って新たな人生の一歩を踏み出す行為ですから、いつまでも過去(離婚交渉)に時間をとられるのは両当事者にとって得策ではありません。そのため、私は離婚問題を早期に解決することを重視しています。
問題を解決する方法は一つしかありません。それは行動を起こすことです。1人で悩んでいても、同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで、何の解決にもなりません。思い切って専門家にご相談ください。
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